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第250話

瀬玲は不満そうに幸太朗を睨んだ。

「私が来なかったら、あなたは奈々を傷つけた張本人を逃がすつもりだったんじゃないの?」

彼女に指摘され、幸太朗は顔色が変わり、少し悔しそうに歯を噛みしめて言った。「それが君と何の関係がある?」

「どうして関係がないの?私は奈々の友達なのよ。あなたが彼女のために助ける以上、私だって同じようにしていいじゃない」

幸太朗は冷笑を漏らした。

「いや、俺の手を借りるな。出て行け」

「出て行けって。そんなのは無理よ」

そう言いながら、瀬玲は弥生に向かって足を振り上げた。

蹴りが飛んできた瞬間、弥生の顔色が変わり、体を丸めるしかなかった。

ドン

瀬玲の一蹴りが彼女の脚に直撃し、痛みが全身に広がった。

弥生は痛みに耐えきれず、目の周りに自然と涙が浮かんだ。

「何をしているんだ」

幸太朗は怒りの表情を浮かべ、次の蹴りを入れようとする瀬玲を素早く引き離した。「お前、正気か?」

瀬玲は力では幸太朗に敵わず、すぐに彼に引き離された。

「正気じゃないのはあなたの方でしょ?せっかく縛ってここまで連れてきたのに、何をためらってるの?まさか、弥生の美しさに心を奪われて、気が変わったんじゃないの?」

その言葉に幸太朗は即座に「何を言ってるんだ。俺の心には奈々だけだ」と怒鳴り返した。

「奈々だけ?それなら、証明してみせてよ」瀬玲は腕を組み、斜めに彼を見下ろした。「以前、奈々を傷つけた者には百倍返しすると言ってたじゃない。目の前にその相手がいるのに、どうするつもり?」

幸太朗は一瞬言葉を失い、段ボールに寄りかかっている弥生を見つめた。

先ほどの瀬玲の蹴りがかなり重かったようで、弥生は今もなお苦しそうな様子だった。

瀬玲はその様子を見て、彼が何も行動を起こさないのを確認すると、嘲笑を浮かべた。「どうしたの?まだ決めかねてるの?それとも、お前も弥生に情を寄せたのか?」

幸太朗は何も言わず、ただ弥生をじっと見つめていた。彼の心中の葛藤を分かっている弥生は、ここが自分の脱出の機会だと察した。

弥生は痛みを堪えながら、「幸太朗、彼女はただあなたを利用して私に復讐したいだけよ。今ここを出て行けば、彼女は私に手を出すことはできない」と冷静に言った。

幸太朗は彼女の言葉の意味を理解していた。もし彼がここを去り、弥生が何かあったとしたら、全ての
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